雅・処

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「あかねさす紫の花」(2) 宝塚版

恐らくこの作品を初めて見て魅了されてしまった人は、最初に見た時の配役が№1になってしまうのではないか、と想像してしまいます。宝塚では、過去に3度(全5パターン)も再演されているそうで、新参者の私なんか想像つかないほどに随分昔から、傑作として語り継がれていたのでしょう。


あらすじ: 飛鳥時代、優れた歌詠みであり才気溢れる女性であった額田女王と大和朝廷を支える二人の兄弟、中大兄皇子大海人皇子の愛の物語。大海人の妃となり子供を産んで幸せな家庭を築いていた額田は、権力者となった中大兄の命により、中大兄の妃に召されてしまう。その日から、兄を慕い、額田を愛する大海人の言葉にできない苦悩が始まる。密かに額田を慕っていた仏師、天比古は中大兄に付き従う額田を見て「あの人(額田)は変わってしまった・・・」と慟哭する。やがて平穏な年月が過ぎたある日のこと、大海人は野駆けの折に額田の元へ駆けつけたことで、もはや額田への想いを止められなくなり・・・。


この物語の魅力は、歴史上の人物に架空の人物を織り交ぜて繰り広げられるのですが、とにかく登場人物の個性がそれぞれ際立っており、演じる側も感情を入れやすい上、ハマればこの上なくハマって存分に魅了されてしまうところだと思います。簡単に言えば、一人の女性を巡っての兄と弟の三角関係ではありますが、互いを想いやる気持ちが強いだけに誰が悪者、と言い切れず*1、嘆き苦悩し、それでも愛さずにはいられない・・・とギリギリのところで感情を押さえているところに「人間の業」と「美学」を感じさせてたまらないのです。

瀬奈じゅん演じる大海人皇子は、最高のハマリ役!】


私の中では、オスカルにコムちゃん(朝海ひかる)であれば、大海人皇子はアサちゃん(瀬奈じゅん)!と独断と偏見でイチオシ。もともと花組バージョンでは、横暴でイケズ(笑)なアニキ、中大兄皇子春野寿美礼ちゃんが演じましたが(→何故かかなり好きです、この役の寿美礼ちゃん)、それまで見たことのないほどの威圧感を見せつけてくれて、ファンとして嬉しい驚きもありました。そこにアサちゃんの大海人です、これ以上、何を望むことがありましょうか。二人の二重唱も最高の出来栄えで、魂が抜かれてしまう恍惚感を味わいました。


大らかで額田女王を真っ直ぐに包み込む、愛情深くて優しい弟、大海人皇子はアサちゃん自身の持ち味とマッチして、えも言われぬ魅力を放ってました。幸せいっぱい笑顔いっぱい、の新婚時代から、後半、最愛の妻を兄に奪われて、ただ耐えるしかない哀しみを体中から滲ませての演技には、身を切るような切なさが伝わってきて悲しいけれどもその愛の強さに何度も’感動’を覚えました。アサちゃん本人が忘れられない台詞に挙げた「・・・来てしまった*2と涙を潤ませて語ったときには、鳥肌が立ったほどです。


感情移入しやすい大海人とは対照的に、ただ横暴なだけに見えてしまいがちな中大兄を演じる寿美礼ちゃんは、この辺りとても苦労したと思いますが、額田が語る「その強い光に射すくめられて」どうしても心を惹かれないではいられない魅力的な人物に仕上がっていてサスガ、と納得のいく出来栄えでした。本当に、寿美礼ちゃんとアサちゃんが全く正反対でありながら、同じ力強さで物語を引っ張っていたのが、成功の秘訣なのでしょう。天比古役のみわっち(愛音羽麗)ちゃんの体当たりの演技も目を引きましたし、いぶし銀のような鎌足役の矢吹翔さんも唸らせてくれました。


忘れられないエピソードとしては、寿美礼ちゃん、大鳥れいちゃん、アサちゃんの3人でのTVインタビュー(WOWOW)の時の話。稽古中に、あまりに感情が入り過ぎて「(次の台詞言うまで)間が空きすぎ」と演出家に注意されたけれども、

「だってこんな気持ちもあって、あんな気持ちもあって、とてもすぐに台詞が言えないんだもん!」

と語っていたこと。これは、芝居を見た時にそりゃあそうだわー、と全面的に同意してしまいました。そんな花組バージョンは、結局ナマの観劇は叶わず、今でも後悔し続けてるのですが、秋には月組全国ツアーで三たび大海人のアサちゃんが登場。今度こそ、夢を叶えたい!と思ってますが、「大海人が逞しくなりすぎてないといいな・・・」と密かに案じてもおります。

宝塚版について詳しくはこちら: あかねさす紫の花 - Wikipedia

復刻盤DVD 5/20発売予定: 復刻版DVD『あかねさす紫の花』『Cocktail』|宝塚歌劇 DVD・ビデオ・CD専門ショップ|TCAショップ
 →ショー「カクテル」もこれが一番好きです。
  「あかねさす」は'95雪組版もDVD復刻が決まりました。

*1:まあキッカケは中大兄の横恋慕(笑)ですが、額田が心惹かれているのは実はこの兄だったりするのでまた厄介です。

*2:額田の元へ一目散に馬を走らせ、再会したシーン