雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

『恋の骨折り損』観劇記(2)

芝居についてはほとんど無知なまま、ただシェイクスピアの喜劇の一つとして見ていたのですが、観劇後も「これって、面白いのかな・・・?」と首を傾げておりました。膨大な台詞は、まるで言葉遊びのよう、煙に巻かれてどこへやら。おそらく当時の貴族社会などを結構おちょくって遊んでいる部分もあるんでしょうが、上品そうで実はお下品だったり、その一方で、見てるほうが恥ずかしくなるほど純情な恋心を詠い上げたり。


(物語については、あれこれ語るだけの度量がないので手短かに。)若き王とその学友3人が、自らに恋の禁止を誓約する。そこへ現れしは、美人のフランス王女と取り巻きの淑女3人。4対4で女達に一目惚れした男達は、あれこれアプローチを考えるが、先手を打たれてなかなかうまくいかない。そこである芝居を見せて、その心を少しでも動かそうとするが。。。


このお芝居、王側と王女側で8人の男優が登場します。その中で、主役は北村一輝さんと姜暢雄君だと思っていたのですが、実のところ、多弁な役どころの高橋洋さんと、派手なお調子者キャラクターの内田滋君がかなり目立ちました。「間違いの喜劇」でもこの二人が劇を転がしていた感じなので同じ展開に思えました。


セットと言えば、ステージを覆いつくすような巨大な大木がドーンと1本。巨木のセットというのは、なんだか異世界に連れて行かれる気がしていいですね。作り物だと分かっていても、空気が綺麗に感じます(笑)。

【あの人もこの人も気になるわ〜】


登場人物達は、オープニングのみならず最初から最後までとにかく通路からの登場が多かったです。おかげで万遍なく近くで見られましたが、その分、ちょっと気もそぞろになりがちです(笑)。中でも、北村一輝さんの美形ぶりは凄い。見かけの通り、濃い顔立ちではありますが、彫りが深くて日本人離れしています。これだけのハンサムでありながら、「綺麗どころを演じるのはイヤ」なんてインタビューで語るだけあって存在が妙にニヒルなんですよね、でもとびっきりのハンサムとしかいいようがありません。


北村さんを初めて知ったのは、'98年の日テレ「奇跡の人」というドラマでした。新宿2丁目系の”ヤバイ人”(オカマさん役)を演じてましたが、あの頃一目で見て強烈な印象を残した役者さんです。いまだにあのインパクトを越える役者さんにはめぐり逢えていません。あれから随分月日が経ちましたが、その間も何度か思い出すほどでしたから、結構好きだったんでしょうね。とうとうこれだけの存在になって、目の前に立ってくれたのね、と感慨深かったです。


身内意識?*1が邪魔して、ついついダメ出しが多くなってしまう、姜君。特に彼の場合は、台詞廻しと発声に難がありすぎるし、すぐに声を枯らしてしまう、とちょっと舞台役者としては致命的な弱点が気になります。本気で勉強して欲しいのだけど・・・それでも、少しは前進してるような気はしました。王女というよりは下町の生娘という感じもしなくはないが(笑)。


そんな中、とても印象的な一瞬がありました。病気だった父の崩御の知らせを受け、それまで男性達をからかっていた気丈な王女がジワっと涙を流すシーン。姜君の持ち味である、人懐こさ・生来の人柄の良さが、ぼわーんと場内にたちこめて空気が一瞬変わった気がしました。これぞライフ役者の真髄(笑)。抜群の上手さはなくても、心の奥底が何かじんわりとくるのです。


蜷川さんが作り上げたキリキリと厳しく張り詰めたムードを、「技術よりハートだ!*2とばかりに、優しく揺さぶりをかけていて、かなり涙腺を刺激しました。蜷川さんの芝居は、多様な役者を組み合わせたプロデュースの面白さで興味を引かれるものの、私の中では演劇的な感動はあっても心情的な感動とはかけ離れてる気がしていました。それが何なのか、分かった気がします。


まだ大学生ながら、達者だった西村篤君も印象的。鼻にかかった特徴的だけど強い声質と小柄な少年体型、何度もブカブカズボンが落ちて(この演出、ちょっとくどすぎですが)ヌードをあますところなく見せていましたが(笑)、無垢でいたずらっ子の少年に見えてきました。女性陣の中の末っ子的な存在、中村友也君も瑞々しい魅力で可愛かったです。


うーん、また悠貴君について書けなかったので、つづく。

*1:なんせ彼のデビュー作、「トーマの心臓」の”でっかいアンテ”から見ているもので

*2:もちろん両方大事ですが。