第2位:PHANTOM
記憶にも鮮明な作品であるスーザン・ケイ原作の『ファントム』が上位に食い込んできました。当然のことながら、コメントを聞いてるだけで倉田さんの情熱もほとばしるようでした。「『ファントム』をやってから、パリ・オペラ座を見たら、これはエリックが建てたのよね*1、とエリックの姿が浮かんでくるようになって。昔とは全然見方が変わってしまったの。」
もともとロンドンで期待を寄せていた芝居を見逃して失意の中、「新演出の”レ・ミゼ”でも見るか。」という軽い気持ちで見たことから、映像・美術のマット・キンリー氏を知り、その奥行と迫力のある映像がものすごいインパクトで迫ってきて圧倒されたのが始まりだったそうです。
確かに10年以上前のスタジオライフの芝居では、小道具がステージの上のわずかに置かれるのみ、というかなり見る手の想像力を要求される(笑)素朴すぎる舞台美術が多かったので、むしろ倉田さんがそういう趣向を好む演出家なのか、と思っていたほどです。
それから数年のうちに、少しずつ映像を投影したり、舞台に大がかりなセットも用意されるようになっていって、「ああ、昔はただお金がなかっただけなのか(笑)。」と気付いていきました。映像とのコラボについては今なお試行錯誤中、という感じで、そこはさすがにマット・キンリー氏と組んだこのファントムが異色作というくらい際立っておりました。
【レミゼとファントムの意外な繋がり】
石飛さんは、「ファントムの後で、続けてすぐレミゼでまたマットと一緒に仕事して、こんな贅沢な体験が許されたのは、僕だけ。」と興奮の面持ちで話してました。2013年のほぼ1年間、東宝版レ・ミゼラブルに出演していた石飛さん、キンリー氏とも何度かリハーサルで一緒になったそうで、「声をかけようかと思ったんだけど、マットは集中しているときは他の何も目に入らないくらいなので、邪魔しちゃいけない、と思ってあまり話せなかった。」
裏話として、新版レミゼに日本古来の芝居演出である「花道」を初めて作ったものの、日本人と違ってイマイチ使い方にが分からず苦心していたということ。石飛さん、「やっぱりやめた方が良かったんじゃないかな・・・。」と内心思ったものの、口は出さずにいたそうです。
キンリー氏の恐ろしいところは、セットに対しての注文の厳しさが半端ないこと。いくら費用をかけたセットや小道具でも気に入らなければ、「ダメ」の一言で総入れ替えしてしまう性分らしく、実際にリハで「あれ数百万円はするんじゃないかしら・・・(汗)」と思ったすごいセットがいともあっさりと却下されて、ビビったこともあったようです。
「堀川が用意した小道具も、直前にダメ出しされて頭抱えていたんだよね。」とか。それを聞いて、DVDを見返すとさもありなん、というほど細部にわたって小道具や美術が飛びぬけていた理由も分かります。「でも、レミゼよりスタジオライフのファントム(第二部)のほうが、背景で使われた”絵”は多かったんです。これは、ちょっと自慢なのよね。」と倉田さんが石飛さんと満足そうに顔を見合わせるのを見て、同じくまんざらではない気分に浸っておりました。
【役者達の陰の努力】
一方、松本君は、前篇のリハーサルで一人舞台に立ち、何度もルチアーナが屋上から落下するシーンの手の振りをやらされて、背景に流れる映像が見えないだけに「オレ、いつまでこれやらされるんだろう・・・?」と不安になっていたそうです。
確かにこの落下シーンは、客席で動く映像と一緒になったのを見たときは、私も「おーっ」と心の中でどよめくものがあり、見事に作戦は的中!すっかり味をしめて(?)ファントム後篇では、多用されたオペラ座内部の映像。上へ下にと映像が動くのですが、これについても倉田さんは目をキラキラさせて童心に返っているようでした。
クリスチーネ役を演じた関戸君とマツシンが、ゆっくりステージを前進しているのに、(背景が後ろへと流れていくので)まるで洞窟をすごい勢いで進んでいるように見えて、演じている時は2人とも自分達は見えないので実感がないものの、後から映像を見て感動したそうです。
他にもマツシンのコメントで印象的だったのは、「この作品を始め、スタジオライフは、新しい試みがいっぱいあって幕が開くまで大変なことも多く、その度にコレ絶対劇団じゃなければできない!、と思ったことが何度もあります。プロデュース公演では、絶対無理なんです。」という言葉。いつしかマツシンが熱く劇団を語るようになったんだなあ、という感慨もあり、団結心に感動もしました。
ガルニエ役の山崎さんは、他の劇団員に遅れて稽古に参加したため、「昨日褒められていた、仲原君に教えてもらって演じていた。」という話をしていました。仲原君は、前日のイベントで『LILIES』の熱演が”愛ある毒舌演出家”(笑)、倉田さんにも褒められたそうで、それを受けての話でした。
また、出演作で神父役が続いた、ということもあって、後学のために関戸君と教会へ行き、神父さんと会ったりもしていたそうで、「神父さんにお金もらっちゃった。」と首をスクメてました。もらったお金の半分は関戸君に奪われたとか。どこまで本当なの?という感じ。
『ファントム』については、以前から倉田さんが話していましたが、いつかそう遠くない将来、連鎖再演が実現しそうです。マチソワ公演か、前後編を2日に分けてやるかは決めていないようですが、絶対に連続で上演したいし、その時は「スーザンも”絶対行くわ!”」と言ってくれているそうです。
スーザンさん宛に送ったDVDは、擦り切れるほど*2見てくれているそうで、シナリオの翻訳が届くのも待ちきれないほど楽しみにしてくれていたようです。編集についても新鮮な驚きがあったようで「ここを使ったの!?」「ああ、このシーンは生かしたのね。」と自分の作品のDVD映像をまるで”わが子”のように愛してくれている様子。
また「スーザンが”ヨシキ、ヨシキ!”って。」と、なかなかお気に入りになってると仄めかされた芳樹君。倉田さんも「さすがに4歳から50歳までのエリックを演じた役者は、世界広しと言えど彼しかいないでしょうね。」そんなところが特別の存在のようです。スーザン女史は、以前、林エリックもベタ褒めしてくれていたらしいので、どちらの主役も気に入ってもらえて嬉しいな、と。
【見果てぬ夢よ・・・】
いつかオペラ座へFCツアーとして行きたいね、と語る倉田さん。触発されて壮大な夢を語り出したのは、曽世さん。
曽世:いつかオペラ座で、『ファントム』をやりたいですね。
関戸:うわっ、怖い。僕も心の中で思いましたが、あまりに怖くて口に出せませんでした。
曽世:僕、思ったこと口に出しちゃうからさ。
とてつもない白昼夢、とその時、私も思いました。でも、案外、夢とばかりは言えないかもしれません。スーザン・ケイが書いた『ファントム』という小説は世界的ベストセラーであえり、スタジオライフが全世界で初上演した芝居です。奇跡的にDVD映像も販売されております。
映画やドラマで映像化を夢見る世界中の熱烈なファントムマニアが、すでにこの”幻の映像”の存在を知り(一部で)話題になっていることが分かりました。英語、中国語、ロシア語のサイトでも、スタジオライフ版が「原作に恐ろしく忠実、かつ男性俳優のみ*3が演じる、驚くべきクオリティーの作品」として紹介されているのです。
中には、かなりの労力を費やしてDVDやパンフレットを取り寄せて紹介している外国人もいます。まさに21世紀グローバル社会を思わせる出来事が、日本の外で粛々と起こってます。字幕をつけて海外販売したりしたら、案外売れるかもしれませんね。というか、海外公演という新たな突破口も不可能ではないかもしれません。知らぬは、”ガラパゴス日本”の我々のみというところでしょうか。
それにしてもまずは、来たるべき『ファントム』再演。私的には、新キャスト発表が怖すぎて・・・楽しみとばかりも言ってはいられません(苦笑)。
◆ファントムロシア系ファンサイト:PHANTOM THE UNTOLD STORY | THE KISS OF CHRISTINE | Studio Life | Japan | Susan Kay | Призрак | Сьюзан Кей | Япония
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